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わたしの爪噛み人生
電車のなかで、人目に触れないよう、指を右へ左へとくねらせ、唇と舌を使って小さな突起を探し求める・・・な〜んて、これ、30歳までよくやってました、わたし。うふふ、爪噛みのことですよ。
わたしは物心ついてから30年間、爪を噛み続けてきました。長い爪に憧れ、何度も爪噛みを止めようと決心し、あの手この手で爪噛みを止める努力をしてきました。でも、何度も何度も挫折し、挙句の果てにはダイエット同様、リバウンドが起こって、血が出るほど深爪になってしまいました。そのうち、爪を短く噛み切るだけではなく、爪の表面を歯でガリガリ削ったり、爪の周りの皮膚まで噛み切るようになりました。
今、爪噛みを止めれるようになって、「爪を噛むのだって個性じゃない」と思えるようになったのですが、爪噛みの癖があった当時は、とにかく爪を噛む自分が嫌いで、指先に異常なまでのコンプレックスを抱いていました。爪噛みさんならわかると思うのですが、爪が短くたって生活に困ることって実は少ないんですよね。でも、周りからはそうは思われない。親にはよく「おまえは爪がないから細かいことができない」と注意されました。たとえば、甘栗を剥くとか、ですね。爪がないから甘栗に亀裂が入れられない、と。でも、そんなの歯を使えばいいわけですよ。ナイフだっていいじゃないですか。でも、親からすると、それじゃぁ納得いかないらしいのです。わたしとしては、甘栗に亀裂が入れられないことより、甘栗を食べるたびに爪のことをチクチク言われることが本当に嫌でした。学校でも手を使った細かな作業をするときは、道具を使って作業するのが嫌なのではなく、周りから爪が短いのを指摘されるんじゃないかとビクビクしていました。他人の目を気にしすぎる傾向があったことは確かですが、若いころは美を求めてダイエットしたりお化粧に励んだり髪をきれいにしたりと、他人から美しくみられたかったんですね。でも、どんな努力をしてもこの短い爪が邪魔をする。何度、「人間に爪がなかったらよかったのに!」と思ったことか・・・。タバコを止めるのも苦労するということですが、タバコのほうが何倍も楽に止められるんじゃないかな、と思っていました。だって、タバコは買わないと手に入らないわけですから。でも、爪はいつでもわたしに付きまとってくるんです・・・。
20代の頃は爪噛みの癖のせいで、何度も悲しい思いをしてきました。友達と美容の話になってもネイルについては話に加われなかったり、彼氏から指輪を買ってやるといわれても一緒にお店に買いにいく勇気が出なかったり、成人式のときに晴れ着を着て撮った記念写真に思いっきり短い爪があらわになっていたり、合コンで男性から「そんな深爪で痛くないの?ちょっとみせてよ!」と言われ、何も言葉を返せず、一緒にいた女友達から同情的な目でみられたり・・・。
爪を噛まない人からすると、「そんなに嫌なら噛まなきゃいいじゃん」と思うことなんだろうけど、これがそんなに簡単なことではないんですよね。何度止めようと決心してもどうしても駄目・・・。20代後半、「あーわたしは一生爪を噛んで生きていくんだろうなー」と爪噛み戦争に疲れきり、諦め、あまり爪のことを考えないようになりました。なんせ30年間噛み続けてきたんですから、この癖は脳の奥底にまで染み付いてしまっていて、もう直すことなどできないと。たとえ、直すことができたとしても、爪を噛むことを忘れて生活できるようになるまでには、やはり同量の30年ぐらいはかかるのではないかと。だとしたら、わたしは60歳。人生のほとんどを爪と格闘して過ごすことになる。そんなのも嫌だ。もう爪のことは忘れたい。30歳のあるとき、あのテレビをみるまで、わたしは爪噛み癖から抜け出せないと諦めていました。
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